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訪問看護におけるサービス提供体制強化加算とは?算定要件を解説

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介護保険だけでなく、医療保険も取り扱いのある訪問看護サービス。

2012年(平成24年)の介護保険制度改正では、他サービスの介護報酬が引き下げられる中、在宅医療の要となる訪問看護の介護報酬は引き上げられました。

今回の記事では、訪問看護のサービス提供体制強化加算に関して詳しく説明していきます。

ぜひ一読し、加算取得の検討をされるとともに、今後の経営にお役立てください。

 

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訪問看護のサービス提供体制強化加算とは

まず、訪問看護におけるサービス提供体制強化加算の概要について説明します。

訪問看護はこれまでは量の確保が重視されたこともあり、2016年時点で訪問看護事業所は全国で約9000ステーションまで増えました。

更なるサービスの質の向上と、スタッフのキャリアアップのため、サービス提供体制強化加算が導入されるに伴い、訪問看護にも適用されることになりました。

人員基準における、いわゆる「ベテラン」の割合や定期的な研修などの要件を満たせば、サービス提供強化加算が取得できます。

 

指定訪問看護ステーションや医療機関の訪問看護では、サービス提供1回につき6単位が加算で計算されます。

定期巡回・随時対応訪問介護看護事業所と連携する場合には、1月50単位の加算になり、1回あたりの加算から月単位に変わります。

また、これらの単位は要介護度における支給限度額の範囲外になります。

訪問看護におけるサービス提供体制強化加算の算定要件

では、加算のための算定要件について解説していきます。算定要件に定められている基準とは、以下のようになります。

 

イ 指定(介護予防)訪問看護事業所の全ての看護師等(指 定居宅サービス等基準第60条第1項に規定する看護師等 をいう。以下同じ)に対し、看護師等ごとに研修計画を作成し、当該計画に従い、研修(外部における研修を含む。) を実施又は実施を予定していること。

ロ 利用者に関する情報若しくはサービス提供に当たっての留意事項の伝達又は当該指定(介護予防)訪問看護事業所における看護師等の技術指導を目的とした会議を定期的に開催すること。

ハ 当該指定(介護予防)訪問看護事業所の全ての看護師等 に対し、健康診断等を定期的に実施すること。

ニ 当該指定(介護予防)訪問看護事業所の看護師等の総数のうち、勤続年数3年以上の者の占める割合が100分の30以上であること。

[出典元:箕面市ホームページ]

つまり、(イ)事業所の全ての看護師ごとの研修計画を作成して実施すること、(ロ)定期的に会議を開くこと、(ハ)定期的に(少なくとも1年に1回)、事業者の負担で健康診断を行うこと、(ニ)勤続年数が3年以上の看護師が、雇用されている看護師全体の30%以上であること、以上4つの項目をすべて満たす必要があります。

(ハ)の定期的な健康診断については、すでに行われていることと思いますので、その他の3点にしぼって説明します。

研修計画について(イ)

算定要件に定められている研修計画では、看護師それぞれについて研修の目標、内容、研修期間、及びその研修を実施する時期について作成します。

看護師としての経験年数の違いにより、既に持っている知識や経験が異なるのは当然ですし、また、医療分野においては常に新しい知識や「常識」が更新されています。

これらに基づいて、事業者がレベルアップのために、どんな能力を取得させたいか、あるいは本人がどんな研修を受けたいかを総合して、研修の目標や内容を決めていきます。

実施の時期は、事業所の人員のやりくりもあるでしょうから、余裕をもった日程にしておく方がいいかと思います。

定期的な会議について(ロ)

定期的な会議とは、おおむね月1回ほどの会議を想定しているようです。

“利用者に関する情報若しくはサービス提供に当たっての留意事項に係る伝達” 

のための会議ですから、関係するスタッフは基本的に全員参加します。

利用者のADLやIADL、心身の状態の変化について情報を共有します。

訪問看護の利用者の中には、複数の持病を持つ方もいます。

高齢者によくある疾病の兆候以外にも、それらの持病において、医療的な側面から特に注意を払っておくべき変化などを見逃さないようにするためです。

利用者の意欲の減退など、サービス提供時に気づいたことや気になることも報告します。

 

その他にも、サービス提供時における、利用者やその家族との日常の会話を通して得た、利用者の訴えや特別な要望などもこの会議で共有し、より良いサービス内容となるように活用します。

また、この会議を開くことで、サービス提供や利用者について、疑問に思っていたことや不確かだった事項の確認ができます。

会議の内容は記録を取ってファイルしておけば、監査の時の証明にもなります。

勤続年数と割合について(ニ)

スタッフとして雇用されている看護師の勤続年数は、常勤換算方法によって計算されます。

これを用いて、勤続年数が3年以上あると計算された看護師の割合が、全体の3割以上である必要があります。

福祉業界全体において、離職率が高く、なかなか良い人材が長期で勤続してくれない状況にある中、「うちの訪問看護事業所では、看護師の3割以上が3年以上働いています」と言われると、確かに利用者や家族にとっても、利用者とサービスを結びつけるケアマネージャーにとっても、「しっかりした事業所なのだろう」という印象を受けます。

 

訪問看護を行う法人の中には、グループ施設、グループ事業所を運営するところもあると思います。

そういった施設では、人事異動が行われることもあります。

例えば、ある医療法人が、病院、デイサービス、特別養護老人ホーム、訪問看護事業所を運営しているとします。

この場合には、勤続年数の算定に当たって、この訪問看護事業所における勤務年数が3年に満たないとしても、病院の経営する他の介護サービスを提供する施設において、直接サービスを提供する職員として勤務した時期があれば、これを合算して、3年を満たすようにすることもできます。

もうひとつの(イ)及び(ロ)について

訪問看護のサービス提供には、もうひとつの(イ)及び(ロ)があります。

これは、(イ)=指定訪問看護ステーション、(ロ)=病院や診療所などの医療機関が行う訪問看護サービスのことです。

訪問看護の事業所はこの2つの形態になり、それぞれの訪問看護費や介護予防訪問看護費の報酬単位が異なっているので、(イ)と(ロ)として分ける必要があるのです。

報酬においては、基本部分のサービス提供時間ごとの単位や、緊急時訪問看護加算の単位が異なっていますが、サービス提供強化加算においては(イ)と(ロ)ともに、サービス提供1回につき6単位が加算されます。

 

ややこしいですが、事業形態を分けるための(イ)及び(ロ)と、サービス提供体制強化加算の算定要件の(イ)〜(ロ)と混同しないようにします。

訪問看護におけるサービス提供体制強化加算のQ&A

Q:産休・介護休暇・育児休暇の場合でも勤続年数に含まれるのか?

A:看護師は女性の割合が高いですが、妊娠、出産に伴い、産休や育児休暇を取得される方、あるいは介護休暇を取得される方もいるかと思います。

これらの休暇中も雇用の契約が維持されているので、継続年数に合算することができます。

 

Q:職員割合算出の常勤換算方法とは?

A:対象期間は、届け出をする月の前までの11カ月間(通常前年度の4月〜2月)になります。

新規開設事業所については、前3カ月の実績が必要になることから、開設後4カ月目から加算の届出が可能となり、それ以前の3カ月間の実績を用います。ひと月あたりの常勤と非常勤の人数と、それぞれの勤務時間の合計から算出されます。こちらに計算例がありますので参考にしてください。

[出典元:八尾市ホームページ]

まとめ

いかがでしたでしょうか?

算定要件のイ〜ニの中で、おそらく勤務時間中の時間のやりくりが難しくなる研修計画と、長期にわたり勤務するスタッフの確保が難しい点ではないかと思います。

しかし、長期的な視点で見れば、事業所全体の質のレベルアップにもつながります。

 

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サービス提供体制強化加算について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。

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