通所介護・通所リハビリ事業者の皆様。
中重度者ケア体制加算はとっておられますか?
皆様知っておられるとは思いますが、人員基準や、対象となる人数の計算方法など、注意する点が多いために、躊躇していらっしゃる方も多いのではないでしょうか?
この記事では、その中重度者ケア体制加算に関して、算定要件から計算方法まで詳しくご説明いたします。
ぜひ、ご一読の上参考になさってください。
中重度者ケア体制加算とは?
中重度者ケア体制加算は、2015年(平成27年)の介護報酬改定の際に新設された加算です。
中重度ケアが必要な利用者が増えていることを背景に、中重度者ケア体制が必要であっても、在宅での生活が維持できる体制を整えることを目的として創設されたと考えられます。
在宅生活の維持が目的のため加算が適用されるのは、「通所介護」「通所リハビリ」の、2サービスのみとなります。
その中でも、利用者のうち3割以上が中重度者ケアの必要な施設(具体的には3割以上の利用者が要介護3以上)のみ適用になります。
通所介護→45単位/日
通所リハビリ→20単位/日
加算対象に関しては、利用者に対して中重度ケアが行える体制を整えているという解釈で、中重度者だけでなくすべての利用者に適用されます。
では、実際にどのような要件を満たせば算定が可能なのでしょうか?
中重度者ケア体制加算の算定要件
算定に関しては、人員配置など若干異なる点があるため、ここでは、サービス別に見ていきたいと思います。
通所介護の算定要件
利用者の要件
前年度、もしくは算定を行う月を含め前3カ月の利用者のうち(前年度実績のない事業所に適用)、要介護3以上の利用者3割以上を占めることが必要です。
この際に要支援者は人数に含みません。
直近3カ月の状況で申請した事業者は、その後も要件を満たしているか確認が必要であり、要件を満たさなくなった場合は直ちに届け出る必要があります。
職員配置の要件
以下の2要件をどちらも満たす必要があります。
1)人員基準で定められている介護職員または看護職員の人数に加えて、介護職員または看護職員を常勤換算で2以上配置することが必要です。
2)サービス提供時間内において、専従の看護職員を1人配置することが必要です。
利用者数が11人を超える事業所は、看護職員の配置義務があります。
その看護職員を専従職員とすることは可能です。
しかし、個別機能訓練加算Ⅰを加算する際の専従の職員を看護師としている場合の看護師と兼任することは不可能なため、注意が必要です。
(どちらも専従の必要があるため)
期間内において、看護師が配置できていない日がある場合は、その日は算定できないので注意が必要です。
その他要件
中重度者ケア体制加算を算定する際には、
"中重度のものであっても、社会性の維持を図り、在宅生活の維持に必要なケアを計画的に実施するプログラムを作成する必要がある"
【出典元:厚生労働省令】
と、あります。
書式等の指定はありませんが、リハビリ計画書等への記載が必要です。
通所リハビリの算定要件
利用者の要件
通所介護と同様に、前年度、もしくは算定を行う月を含め前3カ月の利用者のうち(前年度実績のない事業所に適用)、要介護3以上の利用者が3割以上を占めることが必要です。
職員配置の条件
以下の2要件をどちらも満たす必要があります。
1)人員基準で定められている介護職員または看護職員の人数に加えて、介護職員または看護職員を常勤換算で1以上配置することが必要です。
2)サービス提供時間内において、専従の看護職員を1人配置することが必要です。
これも同様に他の加算等で必要な専従の人員を看護師が満たしている場合は、兼務は認められていませんので、注意が必要です。
その他要件
重度者ケア体制加算を算定する際には
"中重度のものであっても、社会性の維持を図り在宅生活の維持に必要なリハビリを計画的に実施するプログラムを作成する必要がある"
【出典元:厚生労働省令】
とあります。
書式等の指定はありませんが、リハビリ計画書等への記載が必要です。
算定の要件については、ご理解いただけましたでしょうか?
どちらとも、サービス提供時間内の看護師の配置がポイントになりますので、その他の加算との兼ね合いも見ながら、不足なく配置したいものです。
では次に、通所介護、通所リハビリ共に、算定の要件の中に記載されている、プログラムについて具体的に見ていきたいと思います。
中重度者ケア体制加算のプログラム
中重度者ケア体制加算を算定する際には、
"中重度のものであっても、社会性の維持を図り在宅生活の維持に必要なケア(通所介護)・リハビリ(通所リハビリ)を計画的に実施するプログラムを作成する必要がある"
【出典元:厚生労働省令】
と、あります。
介護度が中重度の方に対する、在宅生活の維持に必要なリハビリやケアは想像しやすいと思いますが、社会性の維持を図るプログラムの立案は、なかなか難しく感じられるのではないでしょうか?
ここでは、プログラムに求められる内容と具体的な例を挙げて説明します。
プログラムに求められる内容は?
"これまでその人が築いてきた社会関係や人間関係を維持し続けられるように、家庭内の役割づくりのための支援や、地域の中で役割や生きがいを持って生活できるような支援をすることなどの目標を通所介護計画(通所リハビリ計画)または、別途作成する計画に設定し、通所介護(通所リハビリ)の提供を行う必要がある。"
【出典元:厚生労働省令】
とあります。
そのことから、単に機能面のリハビリや、生活環境を整えるだけでなく、本人が家庭生活や社会生活の一端を担うことで、生きがいを持って生活できるための援助を求められているということになります。
プログラムの具体例
まずは、利用者さんが今家庭生活や、社会生活で出来ていることから聞いていきましょう。
そこで、利用者さんの現在の社会生活や家庭生活での役割が見えてくると思います。
例えば、片麻痺があり、三点杖で歩行されている利用者さんがおられ、家庭における役割として、「朝一番に家族のために玄関まで朝刊を取りに行く」ことをされているとします。
要介護3以上の方を仮定すると、容易な仕事ではないことは想像できると思います。
このような家庭内での役割を維持できることを目標とし、それを行う環境を整えたり、体力を維持するために立てるプログラムこそが、中重度者ケア体制加算で求められているプログラムであると思われます。
上記内容でプログラムを考えると、
例)目標「毎朝新聞を取りに行ける」
・三点杖での歩行が安全に出来るように、筋力の維持のためのプログラムを行う。
・家族に新聞受けまでの状況を聞き、そこまでの環境整備のアドバイスを行う。
と、なります。
プログラムに関しては、通所介護計画書や、リハビリ計画書に記載する目標やケアプランの中に一緒に記載されることが多いようです。
中重度者ケア体制加算の計算方法
ここからは、加算を取るために必要な職員の人数や、要介護3以上の利用者の割合の計算方法について説明したいと思います。
中重度者ケア体制加算を取るためには、
通所介護
人員基準で定められている介護職員または看護職員の人数に加えて、介護職員または看護職員を常勤換算で2以上配置することが必要です。
通所リハビリ
人員基準で定められている介護職員または看護職員の人数に加えて、介護職員または看護職員を常勤換算で1以上配置することが必要です。
具体的な計算方法は、月ごとに介護職員と看護職員の加配時間の延べ時間を計算し、常勤の勤務必要時間で割った数が、月平均で2(通所リハビリは1)以上多ければ良いということになります。
人員基準で定められた介護職員・看護職員の数を計算する際には、利用者数で数が変動するので注意が必要です。
さらに、延長加算で必要であった職員配置時間は除いて計算しなくてはいけません。
また、加算要件で定められている看護師の数は除いたうえで計算することが必要なので、注意が必要です。
実際の例)
ここでは、通所介護を例に挙げて説明します。
曜日 |
月 |
火 |
水 |
木 |
金 |
土 |
日 |
利用者数 |
20 |
20 |
20 |
20 |
20 |
20 |
0 |
① 必要職員数 (時間換算) |
14 |
14 |
14 |
14 |
14 |
14 |
0 |
職員A |
8 |
8 |
8 |
8 |
8 |
8 |
0 |
職員B |
7 |
0 |
7 |
7 |
7 |
0 |
0 |
職員C |
8 |
8 |
0 |
0 |
8 |
8 |
0 |
職員D |
8 |
8 |
8 |
8 |
0 |
8 |
0 |
職員E |
7 |
7 |
7 |
7 |
7 |
0 |
0 |
②勤務時間数 |
38 |
31 |
30 |
30 |
30 |
24 |
0 |
② 加配時間数 (①-②) |
24 |
17 |
16 |
16 |
16 |
10 |
0 |
実際は1カ月すべての日において行いますが、ここでは1週間で例をあげます。
この施設での常勤の必要勤務時間は7時間とします。
①必要職員数は常勤の時間換算で割り出します。
そこから割り出された数を、実際に勤務した②勤務時間数から引くと、③加配した時間数が出ます。
この③加配時間数の月合計を、常勤職員の必要とされる勤務時間の月合計で割ったものが2以上であれば良いのです。
この一週間では、加配時間数 99時間
常勤の勤務必要時間 42時間
であり、99÷42=2.35(少数第二位以下は切り捨て)
2以上になるため、人員基準は満たされたことになります。
2.利用者における要介護3以上の者の割合の計算方法
中重度者ケア体制加算を取るためには、通所介護、通所リハビリ共に、要介護3以上の利用者の実人数もしくは延べ人数の割合が30%以上でなければなりません。
この際に要支援者は人数に含みません。
実際に計算方法を見ていきましょう。
実際の例)※要支援者は表に記載していないものとします。
利用者 |
介護度 |
|
||
1月 |
2月 |
3月 |
||
利用者1 |
要介護2 |
7 |
5 |
7 |
利用者2 |
要介護3 |
12 |
10 |
12 |
利用者3 |
要介護4 |
12 |
11 |
12 |
利用者4 |
要介護1 |
7 |
4 |
8 |
利用者5 |
要介護2 |
7 |
7 |
7 |
利用者6 |
要介護3 |
13 |
10 |
13 |
利用者7 |
要介護2 |
7 |
5 |
7 |
利用者8 |
要介護4 |
13 |
10 |
13 |
利用者9 |
要介護1 |
7 |
6 |
7 |
利用者10 |
要介護2 |
7 |
6 |
7 |
利用合計数 |
|
92 |
74 |
93 |
要介護3以上の利用者 |
|
50 |
41 |
50 |
- 実人数での計算
全利用者 10人+10人+10人=30人
要介護3以上 4人+4人+4人=12人
12÷30=0.4 >0.3
で、基準を満たしている。
- 延べ人数での計算
全利用者のべ人数 92+74+93=259
要介護3以上の延べ人数 50+41+50=141
141÷259=0.54 >0.3
で、基準を満たしている。
上記2種類の計算方法のどちらかが基準を満たしていれば良いとなっています。
中重度者ケア体制加算の注意点
上記の基準以外にも、加算を取る際に注意すべき点を具体的な例を挙げて見ていきます。
看護師数について
通所リハビリで中重度者ケア体制加算を取る際には、通所リハビリを行う時間帯を通して、1名以上の看護職員を確保する必要がありますが、専従看護師2名とも体調不良などで欠勤する場合もあるかと思います。
その際には、中重度加算はその日に限り算定することが出来ません。
通所介護でも専従看護師の欠勤があった際には同様になります。
加配職員の数と看護職員数について
中重度者ケア体制加算を取る際に、提供時間帯を通じて配置する看護職員は加算の要件である加配を行う常勤換算人数に含めることはできません。
しかし、加算の要件となる看護職員とは別に、看護職員を配置している場合には、人数に含めることが可能です。
通所介護における看護職員の専従の問題について
中重度者ケア体制加算を取る際に、通所介護を行う時間を通じて、専ら当該通所介護の提供にあたる看護職員を1名配置とありますが、指定基準で必要とされる看護師が、専従で看護業務を行っているのであれば、それ以外に看護職員を配置する必要はありません。
認知症加算との併加算について
通所介護において、認知症加算と、中重度者ケア体制加算は両方とも条件を満たしていれば、併算定することが可能です。
しかし、中重度者ケア体制加算の看護職員は専従が条件であるため、認知症加算を取るためには、認知症介護に関わる研修を受けたものを別に配置する必要がありますので、注意が必要です。
なお加配する職員数は、両方を兼ねることが可能なため、併算定であっても、常勤換算2以上で問題ありません。
このように、看護職員数や配置の状況が問題となることが多いようです。
看護職員の配置数のミスで、減算や算定不可になりかねませんので、注意しなければなりません。
まとめ
この記事では、中重度者ケア体制加算について詳しく説明していきました。
加算を正しくとるためには、人員配置数のミスをなくすことが重要になってくるようです。
加算を取るということは、日々行っている介護を正しく評価してもらうことでもあると思います。
経営だけでなく、職員のモチベーションの向上のためにも、中重度者ケア体制加算をとってみませんか?
この記事が、中重度者ケア体制加算を算定されるきっかけになりましたら幸いです。
最後までお読みくださって、ありがとうございました。
この記事が参考になったと思われた方、シェアしていただけますと嬉しいです。
中重度ケア体制加算について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。