介護支援ブログ

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人員基準とは 介護事業を開業、継続するうえで守らなくてはならない基準とは

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事業所運営にあたり、人材確保が必要不可欠ですが、昨今の介護業界において、人材確保は困難を極めます。そのため、常勤スタッフではなく、パート勤務を多く雇っている事業所が多いと思います。そこで、重要になってくるのはサービス業種別の人員基準かと思います。

今回は、人員基準について詳しく紹介していきます。介護事業を開業予定の方や人員について不安な介護事業者の方はぜひご覧ください。

 

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人員基準とは

介護事業所(居宅介護支援、訪問介護、通所介護など)の開設には、人員基準というものが設けられています。利用者それぞれへのサービスの低下を防ぐ他、施設の健全な運営のためや、指定権者から介護事業所としての指定を受けるために設けられたものを人員基準といいます。

その人員とは、介護支援専門員(ケアマネージャー)やはじめ、看護スタッフ(正看護師、准看護師)、生活相談員、介護職員、機能訓練指導員、常勤管理者など様々な職種のスタッフが携わります。

人員基準は提供サービスによって異なりますので、確認が必要です。また、もちろん開業の際に満たしているだけでは問題があります。実地指導や監査といった行政が介入するとき、人員に不備があれば最悪指定取消となってしまいます。

開業のときのみならず、日々の業務や人員が入れ替わったときなど定期的に確認するようにしましょう。

 

人員基準に頻出する語句と計算方法

・専らとは

専らとは、一般的には1つの事柄に集中すること、専念することを意味します。介護業界や人員基準にとっても同じで、1つの業務に集中することを指します。頻出する「専ら従事する」「専ら提供に当たる」は、原則としてその時に与えられた職務を全うし他の業務に介入しないことを意味します。

複数の資格を持っている職員の場合、能力的に様々な業務ができてしまいますが、人員基準の規定として「専ら」と定められているときには、任せられている業務を全うしなければなりません。

 

・常勤

常勤とは、事業所によって定められている週単位での勤務すべき時間を超えていることを意味します。その数値が32時間を下回る場合は32時間とします。よく正社員と勘違いしている方が見られますが、非常勤の職員であっても規定の勤務時間より長ければ常勤扱いとなります。

しかし、常勤にはイレギュラーが多く、例えば規定就業時間が32時間、勤務時間も32時間の職員が1日有給休暇を取得し、その週の勤務時間が32時間に満たない場合でもその職員は常勤扱いとなります。常勤としてみなされるのは勤務すべき時間であり、実質労働時間ではないからです。このように、細かいルールに配慮する必要があります。

 

・常勤専従

常勤の意味合いは先述の通りです。専従とは、勤務している職員が与えられた業務以外を行わないことを指します。つまり、常勤の要件を満たしながら、一定の職務に従事しているスタッフのことを、常勤専従と呼びます。

 

・常勤換算

常勤換算とは、事業所に勤めている職員全員の勤務時間の合計から事業所の常勤が勤務すべき時間数で割ることで、常勤でない職員を常勤職員数に変換することを意味します。職員全員と記載しましたが、パートや正社員等の職種は全く関係ありません。

常勤換算後の常勤換算人数の計算方法は以下となります。

 

常勤換算人数=

常勤職員の人数(非常勤職員の勤務時間の合計÷常勤職員が勤務するべき時間)

 

例えば、○△×事業所という訪問介護事業所のスタッフが5名いたとします。(この事業所の常勤の所定労働時間が週40時間と仮定します。)

Aさん:40時間(正社員)

Bさん:40時間(正社員)

Cさん:30時間(パート)

Dさん:20時間(パート)

Eさん:10時間(パート)

と仮定するのであれば、この場合の常勤換算式は以下のようになります。

2 + {(30 + 20 + 10) ÷ 40}=3.5

訪問介護事業所における運営規定では常勤換算で2.5人以上という基準がありますが、この事業所ではそれをクリアしていますので、人員基準を満たしていることになります。 

 

人員基準に含まれる職員と、そうでない職員

人員基準に数えられる職員

派遣社員や有給取得者

仮にある派遣職員を雇っている事業所の常勤の所定労働時間が月40時間とするとしましょう。契約社員として1年間、1日8時間週5日勤務の契約になっている場合、正社員ではありませんが、月に40時間以上の勤務になっているので派遣社員でも常勤という扱いになります。

また、上記のような月40時間勤務の労働者が有給休暇を取得した場合、実質の労働時間は月40時間未満になります。人員基準以下の勤務体系のように思えますが、この場合でも常勤扱いになります。あくまで常勤の定義として、勤務すべき時間と定められているので、実際に働いた時間は人員基準上関係ありません。

 

人員基準に満たされない職員

産休・育休取得者

産休・育休などで、1月以上勤務しない人については、常勤換算に含めることはできません。しかし、勤務時間を0として、職員の氏名に掲載し、運営規定などにおける員数に含ませることは可能です。

 

その他

非常勤勤務者

非常勤勤務者の場合、その事業の形態によって人員基準が変わるため、必要な人員によっては非常勤では人員基準を満たさないケースがあります。

例えば居宅介護事業所の場合、管理者は常勤かつケアマネージャーである必要がありますが、利用者35人以上になるとケアマネージャーが1名増員しなければなりません。その追加のケアマネージャーは非常勤でもあってもよいとされています。非常勤勤務者の人員基準については、展開する事業によって扱いが様々ですので、事業別の人員基準を確認しましょう。さらに、監査指定期間により、人員基準の取り扱いが異なることもあるので、スタッフの配置については、管轄する監査指定窓口で確認しましょう。

 

 

 

人員基準違反について

人員基準違反とは?

介護事業者は、厚生労働省や指定権者によって通告された介護保険法や基準を適切に守り、運営することが義務付けられています。また、常にその事業の運営向上に努める必要があるとされていますが、中には上記を守りきることができない事業所も存在します。このように、その事業所に定められた人員要件を満たせずに虚偽の人員報告を行い、行政から処分されてしまうことを、人員基準違反といいます。

 

いつ発覚するのか

各事業所にて定期的に行われる「実地指導」と呼ばれるものがあります。実地指導とは、指定更新期間内(6年)に1度、都道府県の担当者が直接介護事業所を訪問し、適正な事業運営がなされているか確認する機会のことです。実地指導はおおよそ2週間前に告知してから行われるため、突然訪問されることはまずありません。また、日ごろから健全な経営を心がけている事業所であれば、この実地指導で基準違反が発覚するケースは稀です。

一方、実地指導以外に担当者が事業所に訪問するものとして「監査」があります。これは実地指導で違反と危惧される箇所が見つかったときや、利用者や家族からの苦情や相談などが原因となり行われます。行政側の勧告や命令に従わなかった場合や違反が実際に見つかった場合、指定を取り消すなどの強制的な措置を行う必要があるか判断するものです。この監査で、人員基準違反が発覚するケースがほとんどです。

 

違反するとどうなるのか

違反した場合、事業所の指定の取り消しや請求の一部制限、新規利用者の受け入れ停止、期限付きでのサービス停止などの処分を受けます。

 

事例

平成25年2月度の処分例

  • A訪問介護事業所:人員基準違反例

サービス提供責任者が常勤専従ではなく、併設事業所の業務を兼務していたため。

  • B通所介護事業所:人員基準違反例

生活相談員、看護職員及び介護職員について、不在日も出勤したように加工した出勤簿を監査時に県に提出。

このような事例は都道府県等のホームページに掲載されていることもあります。反面教師として事業所の適正な運営に努める必要があるでしょう。これくらいならバレないだろうと安易な気持ちで事業を運営していると、最終的に被害を受けるのは利用者の方々です。また、そのような事業所はいずれ内部告発や利用者からの訴えで必ず監査が入り、違反が発覚するでしょう。

 

 

人員基準欠如減算について

人員基準欠如減算とは?

人員基準欠如減算とは、通所介護にかかる減算の一種です。通所介護の必要人員数は厚生労働省によって明確に定められていますが、その基準に達しなかった場合に算定されます。

減算の目的としては、一定の介護サービスの質を担保することと考えられます。職員が少ないということは、職員1人あたりがケアを担当する利用者の数が増えることになります。必然的に利用者1人あたりが享受するサービスの質は下がることなり、利用者は適切なケアを受けることができなくなってしまいます。人員基準欠如減算はこのような事態を防ぐために存在します。

下記の計算式では、実際にどの程度の人員が必要か割り出すことができます。

 

介護職員の場合

1ヶ月に配置された職員の総勤務時間数 ÷ 1ヶ月に配置すべき職員の総勤務時間数

計算結果が0.9を下回った場合に算定

 

看護職員の場合

サービスが提供された日に配置された総看護職員数 ÷ サービス提供日数

計算結果が0.9を下回った場合に算定

 

人員基準違反との違い

人員基準違反は介護事業所立ち上げに際した必要スタッフ全職種対象にしていいますが、人員基準欠如減算は看護・介護職員のみ対象となっています。つまり、相談員や栄養士などは、この人員欠如減算対象職種ではないということなります。

しかし、減算されないからといて、これらの職員を配置しなくて配置基準を守らなくてもよいという意味ではありません。人員基準について、また事業所内のサービスを考えた上で、配置するか否かを判断しましょう。

  

いつ発覚するのか

人員基準違反とは異なり人員基準欠如減算は、事業所の必要書類の不手際から発覚する場合や、実地指導から計画書の確認を通して発覚する場合など様々です。

介護事業所では実地指導などの際、利用計画書の提出を求められる場合があります。このような機会に人員基準欠如減算の対象となる事業所の多くは以下のようなケースに陥っているようです。

 

  • 計画作成担当者が配置されていない
  • 介護支援専門員の資格を持っている人が計画作成担当になっていなかった
  • 厚生労働省が定める研修を受講していない計画作成担当者を配置して、当該職員が研修を受講しないまま退職した

 

 

まとめ

人員基準は事業を展開する上で常に確認しておくべき事項です。この人員基準を満たさずに事業展開すると、最悪の場合は指定取り消し、業務停止などの行政処分になる可能性がありますので、必ず確認をしておきましょう。

また、昨今の介護業界では利用者が増加の一途を辿る反面、スタッフの数は伸び悩んでいる実情があります。そのため、人員基準は満たしている、でも、人が足りないと嘆いている事業所は多く存在します。

そのため、利用者から満足した声を得られないことや、介護職員の一人当たりの負担増大に伴い、離職が加速するなど、悪循環に陥るケースも多々見受けられます。人員基準は、あくまで”最低これだけの人数はいないと厳しいですよ”という目安であるということを忘れないでください。人員基準分だけ職員を用意すればいい、という解釈は推奨しません。あくまで利用者目線となり、サービスの質を高められるような人員配置ができるような事業所が望ましいですね。

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人員基準について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。

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