介護支援ブログ

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総合事業の基本チェックリストってどんなもの?

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介護事業者の皆様、総合事業への移行準備は進んでいるでしょうか?

また、利用者の皆様は総合事業による変化を理解できているでしょうか?

平成27年度からの新しい総合事業にて、高齢者のサービス利用までの流れが一部変化することとなりました。

具体的には、要介護認定までの流れに変更があるのですが、これは事業者・利用者それぞれが知っておくべき変化ではないでしょうか。

今回の記事では、主な変化の原因である「基本チェックリスト」について解説します。

 

 

そもそも基本チェックリストは何のためのものなのか

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平成27年度に新しい総合事業の施策が発表され、予防給付の訪問介護事業、通所介護事業が総合事業へ移行されることとなりました。総合事業の目的としては、介護状態への予防・自立した日常生活の支援を、介護利用者や一次・二次介護予防対象者の多様なニーズを踏まえて実現すること、といえます。総合事業では、重い介護状態にならないために、自立した日常生活を実現させるために、各市町村や地域の住民が主体となって今まで以上に多様なサービスを、効率的に・効果的に促進する必要があります。その結果として、要介護認定とならない高齢者の増加、自立支援・重症化予防につながることが重要です。

さて、本題の基本チェックリストについてです。基本チェックリストとは、厚生労働省によって作成されたもので、介護予防が必要である65歳以上の高齢者を早期に発見し、介護を必要とする生活を未然に防ぐため25のチェック項目です。元々、基本チェックリストは平成27年以前からも存在していましたが、新しい総合事業により、その役割が少し変わることとなりました。次トピックでは、平成27年度までのチェックリストとそれ以降のチェックリストの役割の違いについて解説します。

 

平成27年度以前の基本チェックリストとの役割の違い

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先ほども記載した通り、基本チェックリストは平成27年度までも存在していました。しかし、その役割には差異があります。以前までの基本チェックリストは、自治体にも寄りますが、高齢者に対して基本チェックリストを送付し、その回答から介護予防が必要であると判断された高齢者に対して、各自治体がそれに適した対策(講習や教室など)を行っていました。つまり、要介護認定とは紐付いていませんでした。一方、平成27年度の新しい総合事業からは、基本チェックリストを要介護認定の手続き上含めることとなりました。これにより、以前に比べて高齢者が利用すべきサービス区分がより明確化することになります。未来的に、高齢者の生活に多様性・様々な選択肢を設けることで、高齢者にとって自立して生活できる基盤をつくるための施策といえます。

基本チェックリストの質問項目に関しては、平成27年度以前と変わりはありません。追加点として、「事業対象者に該当する基準」を新たに設けられることとなりました。基準の該当者には、地域包括支援センター等において、介護予防ケアマネジメントを実施することとなります。その際、「閉じこもり」「認知機能の低下」「うつ病の可能性」についても判断を行い、高齢者それぞれに適したサービスを勧めることとなります。

上記について、1つの基準のみに当てはまった場合でもアセスメント(情報の分析)を行います。また、基準項目に関係なく、高齢者に対して自立支援に向けた課題を抽出し目標を設定、効果的なサービスにつなげることで、適当な介護予防を模索します。

要するに、「基本チェックリスト」「事業対象者に該当する基準」を用いることで、高齢者一人ひとりに見合ったサービスの提供を目指し、地域として介護の必要性を最低限に抑えるための取組といえます。

 

サービス利用までの流れ

では、サービスを利用するまでの流れのどこに基本チェックリストが使われるのでしょうか。現行のサービス利用手続きと総合事業実施後の利用手続きを比較したいと思います。

  • 現行のサービス利用手続

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  • 総合事業実施後の利用手続

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[参考:介護予防・日常生活支援総合事業のガイドラインについて

 

画像の通り、市町村の窓口に相談した後、基本的チェックリストが実施されます。その後、要介護認定をするもの、サービス事業対象者、その2つに該当しない者に分類され、具体的にどのサービスを利用することができるのかが決定します。

 

基本チェックリストの様式一覧

最後に、厚生労働省が示している基本チェックリスト様式例と事業対象者に該当する基準、基本チェックリストについての考え方について紹介します。

 

基本チェックリスト様式例

No. 質問項目 回答:いずれかに○ をお付けください
1 バスや電車で1人で外出していますか 0.はい 1.いいえ
2 日用品の買い物をしていますか 0.はい 1.いいえ
3 預貯金の出し入れをしていますか 0.はい 1.いいえ
4 友人の家を訪ねていますか 0.はい 1.いいえ
5 家族や友人の相談にのっていますか 0.はい 1.いいえ
6 階段を手すりや壁をつたわらずに昇っていますか 0.はい 1.いいえ
7 椅子に座った状態から何もつかまらずに立ち上がっていますか 0.はい 1.いいえ
8 15分位続けて歩いていますか 0.はい 1.いいえ
9 この1年間に転んだことがありますか 1.はい 0.いいえ
10 転倒に対する不安は大きいですか 1.はい 0.いいえ
11 6ヶ月間で2~3kg 以上の体重減少がありましたか 1.はい 0.いいえ
12 身長 cm 体重 kg (BMI= )(注)
13 半年前に比べて固いものが食べにくくなりましたか 1.はい 0.いいえ
14 お茶や汁物等でむせることがありますか 1.はい 0.いいえ
15 口の渇きが気になりますか 1.はい 0.いいえ
16 週に1回以上は外出していますか 0.はい 1.いいえ
17 昨年と比べて外出の回数が減っていますか 1.はい 0.いいえ
18 周りの人から「いつも同じ事を聞く」などの物忘れがあると言われますか 1.はい 0.いいえ
19 自分で電話番号を調べて、電話をかけることをしていますか 0.はい 1.いいえ
20 今日が何月何日かわからない時がありますか 1.はい 0.いいえ
21 (ここ2週間)毎日の生活に充実感がない 1.はい 0.いいえ
22 (ここ2週間)これまで楽しんでやれていたことが楽しめなくなった 1.はい 0.いいえ
23 (ここ2週間)以前は楽にできていたことが今はおっくうに感じられる 1.はい 0.いいえ
24 (ここ2週間)自分が役に立つ人間だと思えない 1.はい 0.いいえ
25 (ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする 1.はい

0.いいえ

(注)BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)が 18.5 未満の場合に該当とする

 

 

事業対象者に該当する基準

① №1~20 までの 20 項目のうち 10 項目以上に該当 (複数の項目に支障)
② №6~10 までの5項目のうち3項目以上に該当 (運動機能の低下)
③ №11~12 の2項目のすべてに該当 (低栄養状態)
④ №13~15 までの3項目のうち2項目以上に該当 (口腔機能の低下)
⑤ №16~17 の2項目のうち№16 に該当 (閉じこもり)
⑥ №18~20 までの3項目のうちいずれか1項目以上に該当 (認知機能の低下)
⑦ №21~25 までの5項目のうち2項目以上に該当 (うつ病の可能性)

 

基本チェックリストについての考え方

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【共通事項】

①対象者には、各質問項目の趣旨を理解していただいた上で回答してもらってください。それが適当な回答 であるかどうかの判断は、基本チェックリストを評価する者が行ってください。

②期間を定めていない質問項目については、現在の状況について回答してもらってください。

③習慣を問う質問項目については、頻度も含め、本人の判断に基づき回答してもらってください。

④各質問項目の趣旨は以下のとおりです。各質問項目の表現は変えないでください。

 

  質問項目 質問項目の趣旨
1~5の質問項目は、日常生活関連動作について尋ねています。
1 バスや電車で1人で外出してい ますか  自ら外出し、何らかの日用品の買い物を適切に行っているかどうか(例えば、必要な物品を購入しているか)を尋ねています。頻度は、本人の判断に基づき回答してください。電話での注文のみで済ませている場合は「いいえ」となります。
2 日用品の買い物をしていますか  自ら預貯金の出し入れをしているかどうかを尋ねています。
3 預貯金の出し入れをしていますか  銀行等での窓口手続きも含め、本人の判断により金銭管理を行っている場合に「はい」とします。家族等に依頼して、預貯金の出し入れをしている場合は「いいえ」となります。
4 友人の家を訪ねていますか  友人の家を訪ねているかどうかを尋ねています。電話による交流や家族・親戚の家への訪問は含みません。
5 家族や友人の相談にのっていますか 家族や友人の相談にのっているかどうかを尋ねています。面談せずに電話のみで相談に応じている場合も「はい」とします。
6~10 の質問項目は、運動器の機能について尋ねています。
6 階段を手すりや壁をつたわらずに昇っていますか  階段を手すりや壁をつたわらずに昇っているかどうかを尋ねています。時々、手すり等を使用している程度であれば「はい」とします。手すり等を使わずに階段を昇る能力があっても、習慣的に手すり等を使っている場合には「いいえ」となります。
7 椅子に座った状態から何もつかまらずに立ち上がっていますか  椅子に座った状態から何もつかまらずに立ち上がっているかどうかを尋ねています。時々、つかまっている程度であれば「はい」とします。
8 15分位続けて歩いていますか  15分位続けて歩いていますか 15 分位続けて歩いているかどうかを尋ねています。内、屋外等の場所は問いません。
9 この1年間に転んだことがありますか  この1年間に「転倒」の事実があるかどうかを尋ねています。
10 転倒に対する不安は大きいですか  現在、転倒に対する不安が大きいかどうかを、本人の主観に基づき回答してください。
11・12 の質問項目は、低栄養状態かどうかについて尋ねています。
11 6ヵ月で2~3㎏以上の体重減少がありましたか "6ヵ月間で2~3㎏以上の体重減少があったかどうかを尋ねています。6ヵ月以上かかって減少している場合は「いいえ」となります。
12 身長、体重 身長、体重 身長、体重は、整数で記載してください。体重は1カ月以内の値を、身長は過去の測定値を記載して差し支えありません。
13~15 の質問項目は、口腔機能について尋ねています。
13 半年前に比べて固いものが食べにくくなりましたか 半年前に比べて固いものが食べにくくなったかどうかを尋ねています。半年以上前から固いものが食べにくく、その状態に変化が生じていない場合は「いいえ」となります。
14 お茶や汁物等でむせることがありますか お茶や汁物等を飲む時に、むせることがあるかどうかを、本人の主観に基づき回答してください。
15 口の渇きが気になりますか 口の中の渇きが気になるかどうかを、本人の主観に基づき回答してください。
16・17 の質問項目は、閉じこもりについて尋ねています。
16 週に1回以上は外出していますか 週によって外出頻度が異なる場合は、過去1ヵ月の状態を平均してください。
17 昨年と比べて外出の回数が減っていますか 昨年の外出回数と比べて、今年の外出回数が減少傾向にある場合は「はい」となります。
18~20 の質問項目は認知症について尋ねています。
18 周りの人から「いつも同じ事を聞く」などの物忘れがあると言われますか 本人は物忘れがあると思っていても、周りの人から指摘されることがない場合は「いいえ」となります。
19 自分で電話番号を調べて、電話をかけることをしていますか 何らかの方法で、自ら電話番号を調べて、電話をかけているかどうかを尋ねています。誰かに電話番号を尋ねて電話をかける場合や、誰かにダイヤルをしてもらい会話だけする場合には「いいえ」となります。
20 今日が何月何日かわからない時がありますか 今日が何月何日かわからない時があるかどうかを、本人の主観に基づき回答してください。月と日の一方しか分からない場合には「はい」となります。
21~25 の質問項目は、うつについて尋ねています。
21 (ここ2週間)毎日の生活に充実感がない
22 (ここ2週間)これまで楽しんでやれていたことが楽しめなくなった
23 (ここ2週間)以前は楽に出来ていたことが今ではおっくうに感じられる
24 (ここ2週間)自分が役に立つ人間だと思えない
25 (ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする

まとめ

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総合事業のチェックリストについて、いかがでしたでしょうか?

事業者にとっても利用者にとっても知るべき情報であることが伝わったなら幸いです。総合事業では、市町村と事業所と利用者の知識や知見の差をなくし、お互い歩み寄ることが、結果として地域独自のよりよいケアに繋がるのではないかと考えています。

今一度、地域としてこれからの介護がどうあるべきかを考えてみてはいかがでしょうか。

 

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