実地指導について、よくあるQ&Aをまとめました。
こちらのQ&Aに関する対象事業は以下の通りです。
略称 | 正式サービス種別名 |
---|---|
訪問系 | 訪問介護・訪問看護・訪問リハビリテーション・訪問入浴介護 |
通所系 | 通所介護・通所リハビリテーション |
入所系 | 短期入所生活介護・短期入所療養介護・特定施設入居者生活介護 |
居宅介護 | 居宅介護支援事業 |
その他 | 居宅介護療養介護指導・福祉用具貸与・特定福祉用具販売・住宅改修費支給 |
また、実地指導についての基礎知識は「介護の実地指導とは」にて解説しています。
- Q1.実地指導で事前にすること、準備することは何ですか?
- Q2.実地指導では、何を聞かれるの?
- Q3.当日、何か注意する点はありますか?
- Q4.実地指導の際、事業所側では何人で対応しましたか?またどのくらいの時間がかかりましたか?
- Q5.指定された書類は、全てチェックされるの?
- Q6.事業所独自に作成した勤務表を使っていますが、ひな形に合わせて作り直した方がいいのでしょうか?
- Q7.実地指導の準備で記録を見直していたら、不備を見つけました。今から直したら、不正になりますか?
- Q8.指示されたもの以外に、準備しておいた方がいいことはありますか?
- Q9.過去に人員基準に達していなかったことが判明しました。どうすれば?
- Q10.タイムカードや雇用契約書などを、別の場所にある本社で管理しています。実地指導の時はどのようにすればいいでしょうか?
- Q11.実地指導で、不備がみつかったらどうなる?
- Q12.事業所が指定取り消しになるのは、どんな場合ですか?
- Q13.実地指導の結果で、ケアマネやヘルパーなど、従業員個人に処分が課せられることはありますか?
Q1.実地指導で事前にすること、準備することは何ですか?
- 書面での確認
- 日程調整と人員調整
- 事前提出書類の作成と提出
- 根拠となる書類の整備
実地指導は、事前準備が大切です。やるべきことも沢山あるので、慌てないように。実地指導の全体の流れを把握しながら、順を追って見ていきましょう。
1.書面での確認
実地指導の際は、まず一定期間前に、文書で事業所あてに連絡が来ます。
<通知文書に書いてある内容>
- 実地指導の対象事業所となったこと。
- 実地指導の根拠となる法令。
- ○日までに、指定の書類を事前提出すること。
- 当日の日程(開始時間など)や当日の駐車場の確保など。
地域差について
- 最初に電話連絡で日程の調整を付けてから、正式な通知文書が送られる場合もあります。
- 短いところでは2週間前、長いところでは2か月前、と自治体によって差があります。
- 事前提出書類のない自治体も有ります。その場合は、当日までに準備されたい書類として示されます。
2.日程調整と人員調整
定められた日程がどうしても調整出来ない場合は、担当課に連絡して変更してもらいましょう。ただし、実地指導には、「事業所として誠意をもって対応する」ことが大切なので、お客様にご迷惑を掛けるなど、よほどのことがない限り、日程は変えない方が良いでしょう。対応する職員は、質問事項に答えられる職員であることが前提ですので、サービス提供責任者や管理者であることが望まれます。当日の日程を空けておくよう、事務所全体でフォローしましょう。
- 居宅介護支援事業所の場合、担当ケースについて詳細に確認されることもありますので、基本的に在籍するケアマネジャー全員で対応できるよう、予定を空けておきましょう。
- 通所介護・通所リハ(以下、通所系)/短期入所・短期療養(以下、短期入所系)の場合、管理者や生活相談員等、質問に答えられるスタッフが対応すると良いでしょう。
<実地指導当日までの流れをフローで把握>
概ね1か月前:日程や事前提出資料の依頼などの文書が送付される。
↓
指定日:直接担当課へ届けるか、郵送する
↓
実地指導前日:地域によって異なりますが、前日に日程を確認する連絡が入る。
↓
(ここで、何人で伺う、など当日の話があるかもしれません)
↓
実地指導当日
3.事前提出書類の作成と提出
次に、事前提出の期限を守り、指定された書類を提出します。通常作成している書類の他、改めて指定書式で作成するものもあります。また自分一人でやればいいや、と思っていたら、本社の人や他スタッフの手を借りないと出来ないものもあった、といったこともありますので、余裕を持って取り掛かった方が無難です。
提出方法は、各自治体から指定があるかと思いますが、主に直接持参か郵送での送付となります。郵送の場合は、書留か特定記録郵便として出した方がよいでしょう。万が一相手先に届かなかった場合、こちらが送付したことの証明となります。
実地指導では、①事前提出書類、②当日に提出する書類、③当日に提示する書類(※Q5に記載)があります。
それぞれの自治体によって、区分けが異なりますので、必ず確認してください。
①事前提出書類(例)
- 自己点検シート/自己点検チェック表…自治体により名称が異なります。
- 指定期間の勤務表
- 調書…利用者の状況(月ごとの利用者数などを記入/特別な対応が必要なケースの概要など、自治体によって内容、名称が異なります。
- 身体拘束者の名簿…入所系など該当する書類のある事業
- 設備・備品台帳…訪問看護など該当する書類のある事業
- 事業所のパンフレット
②当日提出書類となるもの(もしくは、事前提出書類に添付)(例)
- 人員基準に関する書類:組織図(兼務状況のわかるもの)/資格者証/・雇用契約書及び辞令 など
- 設備基準に関する書類
- 平面図
③事前提出書類の根拠書類の準備
例えば、職員に対する研修は、このような計画で実施しております、といったところで、本当にやっているかどうかは分かりません。このため、実施していることが分かる記録が必要となります。
研修計画や実施記録が根拠書類となります。研修の実施記録については、日時や場所、参加者名や内容などを記録し、当日使用した資料などを一緒に閉じておきます。事前提出書類をもとに(事前提出がない自治体は、当日提出・提示書類)、それぞれ根拠となる書類を的確に提示できるよう、準備を進めましょう。
Q2.実地指導では、何を聞かれるの?
運営指導・報酬請求指導に分かれて聞き取りが行われます。
実地指導では、事前提出書類や当日提出書類、当日提示書類に沿って、その内容が実際と合致しているか、確認作業を行っていきます。運営指導として運営基準関連をみる担当職員さんと、報酬請求指導として保険給付関連をみる担当職員さん、といったように最低二人の職員で来所されます。
Q3.当日、何か注意する点はありますか?
設備面のチェックは事前に行っていても、当日、再度チェックしましょう。
- 事業所内の衛生面を再点検
通所系・入所系の施設については、設備などの衛生面をかなり時間をかけてチェックされます。清潔物・不潔物の区別がついているか、感染症予防は出来ているかといった視点で、事前に確認しておきましょう。
<衛生面の確認場所>
トイレ・汚物処理室、洗面台、浴室
※通所系・入所系の施設だけでなく、訪問系の事務所でも衛生面は確認されます。このとき、手指の消毒やトイレの衛生状況、業務に関わる備品の設置状況など、衛生的な観点が主です。過去に、手拭き用のペーパータオルの置き方(平置きだと濡れた手でペーパーをつかんだ時に下のペーパーまで濡れてしまう)についての指摘があり、壁掛けか横置きなどに変更するよう指導されたこともあります。トイレ全体を汚染されている場所とみる為、予備のトイレットペーパーをむき出しで置いてあるのもいけません。
※あくまで衛生的な視点から再点検してみましょう。また自治体の担当職員さんが、来所時に、手指消毒できるスプレーなどが玄関に設置してあると良いでしょう。
- 掲示物チェック
掲示が義務付けられている文書(重要事項説明書・苦情処理体制など)は、目立つ場所に掲示しておきます。ファイル形式で見づらいなどの場合は、改善を図りましょう。指摘事項となります。個人情報の記載があるペーパーが、誰からも見えるような場所に貼ってあったり、個人ファイルが自由に手に取れる状況であったり、といったこともあってはいけません。個人情報保護の観点からも、しっかり事業所内を点検しましょう。
※ケース記録ファイルが、記録の為に共用部のテーブルに置いてあるといったこともいけません。
※上記に関しては、事前にしっかり確認しておくことが必要です。ただし、当日直前に再度点検することをお勧めします。事前に改善してあっても、何も知らないスタッフが良かれと思って元に戻してしまうことがあるからです。また、置き場所や保管方法などを変更した際は、必ずスタッフ全員に「なぜ変更したのか」まで周知することも大切です。その上で、当日実地指導直前に再確認しましょう。
※当日は朝から夕方までの長丁場になります。午前と午後に1回ずつ、お茶やコーヒーなどをお出しすると良いでしょう。担当課の職員さんのご機嫌を伺うのではなく、あくまで実地指導がスムーズにいくような配慮として行います。ただし、お茶菓子などあまり手厚くすると良い印象は持たれませんので、やりすぎは注意です。
Q4.実地指導の際、事業所側では何人で対応しましたか?またどのくらいの時間がかかりましたか?
最低2人で対応。その日は1日予定を空けておきましょう。
- 対応人数は複数名で
実地指導では、管理者もしくはサービス提供責任者が主に対応すると良いでしょう。また勤怠管理や給与関連などに携わっていない場合は、その業務を担当するスタッフに同席してもらうと良いでしょう。先方が複数人で来る場合が多く、同時進行で進められる場合が多いので、この点からも二人以上で対応した方が無難です。突然の追加資料の提出などもありますので、当日の書類準備など協力でき、スムーズに進行できます。
またQ1.の(2)で前述した通り、居宅介護支援事業所の場合は、担当ケースの詳細を答える場合も多い為、在籍するケアマネジャー全員が待機し、必要時に参加すると良いでしょう。
<対応者一覧>
■訪問系……管理者・サービス提供責任者・常勤ヘルパー
■通所系……入所系・管理者・生活相談員
■居宅介護……管理者・主任ケアマネ(在籍ケアマネは全員待機が望ましい)
■その他……管理者・担当者
- 時間は丸一日と考えて終日予定を空けておく
時間的には、丸1日かかると思って、予定を空けておくと良いでしょう。来所時に、当日の内容が、おおよその目安時間とともに示されることが多いようです。
<当日の時間配分の例>
09:00 来所・挨拶・当日の流れの説明
09:15 事務所内見学
10:00 書類確認・聞き取り
12:00 昼休憩
13:00 再開
16:00 まとめ
16:30 講評
17:00 終了
※時間が長引くと、お互いにつらくなるもの。書類の提示や返答などを、スムーズに出来るよう、準備しておきましょう。
Q5.指定された書類は、全てチェックされるの?
書類を全てチェックされることはありません。
全ての利用者について、個別計画書や各種記録などを確認されることはありません。しかし、全てチェックされても良いように、確認が必要です。指定されるケースの選別には様々なパターンがあるので、実際どのケースを確認されるのか、当日にならないと分からないからです。
<確認ケース選定方法>
・指定された項目(利用開始日・年齢・介護度・使っているサービスなど)の入っている利用者一覧を提出させ、無作為で担当者が選定するパターン。
・利用開始が最近で初回加算を算定したケース、生活保護や独居のケース、利用が長く要介護度やサービス利用状況などに変化があるケースなど、個別に状況を指定されるパターン。
もともとあってしかるべき書類ですから、常に整備され、実地指導前にこれらに当てはまりそうなケースについて、不備のないよう再確認しておくことが望まれます。確認されやすいのは、加算がついている事例です。自己点検シートにある加算については細かく確認されますので、上記一連の流れに沿って再点検し、説明を求められた際は答えられるようにしておきましょう。
尚、上記を確認していく中で、あまりにも不備が多かったり、不正が疑われるような事例が発見されたりすると、監査へ切り替わる場合もあります。
<当日提示書類例>(当日提出書類に関してはQ2.を参照)
- 人員基準に関する書類
組織図、職員勤務表、タイムカードまたは出勤簿、資格者証、雇用契約及び辞令
- 設備基準に関する書類
設備、備品台帳
- 運営基準に関する書類
就業規則、契約書及び同意に関する書類(利用契約書・重要事項説明書・運営規定・個人情報の使用に関する同意書など)、サービス計画書関連(居宅サービス計画書/個別介護サービス計画書)、サービス提供の記録(日報含む)、非常災害対策及び緊急連絡体制等に関する書類(避難マニュアル・緊急時対応マニュアル等)、事故防止に関する書類(事故防止マニュアル・事故報告書・ヒヤリハット報告書等)、感染症対策に関する書類(感染症対策マニュアル・関連記録)、苦情処理に関する書類(苦情処理マニュアル・苦情報告書・苦情対応記録等)、職員の研修に関する書類(研修計画・研修実施記録等)、電話受付記録(もしくはそれにかわるもの) ・介護報酬に関する書類(Q2.のAに関連)、介護給付費請求書、介護給付費明細書、利用者に対する請求書、領収証の控え(直近2か月分など指定期間分)、加算の算定要件が整っていることを確認できる書類(実績報告書・実施記録等)
- その他
利用者名簿(要介護が分かるもの)、入退所関連書類(入所系のみ)など
※事故報告書・苦情記録などに関しては、該当事例がない場合でも、ファイルは必要となります。
※事故とヒヤリハットの区別は付けなくてはいけません。また再発防止の為の防止策、改善策などの検討や記録も必要となります。
※電話受付記録は、相談や申し込みがあっても、契約に至らなかったケースについても必要となります。
Q6.事業所独自に作成した勤務表を使っていますが、ひな形に合わせて作り直した方がいいのでしょうか?
その必要はありません。
ひな形はあくまで一例として示されているだけなので、事業所で作成している従来の勤務表で問題はありません。しかし、その勤務表でひな形にある情報が網羅されていない場合が多いようです。情報が抜けていると再度作成し直すこととなり、非常に手間となります。従来作成している表に、不足している項目を付け足しても良いので、抜けのないようしっかりと確認しましょう。
※ひな形に示されている項目については、加算算定や人員基準を確認する上で必要な項目です。常にその勤務表を使うようにすると、間違いが少なくなります。
※常勤換算の検算もされますので、数字が合わない場合は確認を受けます。どのような計算で導き出したものか、メモ書きを残しておくと、聞かれた際に落ち着いて応えることが出来ます。
※シフト表だけでなく、計算をして導き出されるものに関しては、全て上記のようにメモ書きで残しておきましょう。事前提出資料の写しに直接書き込んで、同じ資料を見ながら進められるよう、準備しておきます。
※事前提出書類は、自治体の担当職員さんが事前にしっかりと読み込まれてから実地指導に臨まれます。提出の不足などがあれば事前に連絡がきますが、そうでない内容に関しては、実地指導当日に質問されますので、提出した後も、事前提出資料に沿って準備を進めていきましょう。
Q7.実地指導の準備で記録を見直していたら、不備を見つけました。今から直したら、不正になりますか?
修正の内容によります。
記入ミスや不足していた情報の追加などであれば、訂正・修正しても不正にはなりません。実地指導の前までにしっかりと見直し、修正が必要な部分は修正しましょう。実地指導の目的は「制度管理の適正化とより良いケアの実現」にあります。しかし、下記に関しては不正(虚偽記載)となりますのでご注意下さい。
<不正となる記載例>
- 担当でない人が担当者のふりをして記録を書き直す、書き足す。
- 実態と異なる状況を、事実でないのに事実のように書き直す、書類を作る。
- 実際にはキャンセルだったのに、間違えて請求してしまっているので、サービス提供したように記録を作成する。
修正にあたっては、手書きの場合、修正テープなどは使わず見え消しで二重線、プラス訂正印があれば尚良いでしょう。悪質とみなされると、指定取り消しなどの処分となります。迷うようであれば、自治体の担当課に事前に聞いたほうが無難です。
Q8.指示されたもの以外に、準備しておいた方がいいことはありますか?
過去の実地指導指摘事項や本年度の方針を確認しておきましょう。
- ホームページを確認しよう
前年度の実地指導指摘事項や傾向、本年度の方針などが、毎年各自治体のホームページにアップされています。実地指導前に必ず目を通し、自事業所と照らし合わせて確認しておきましょう。
- 傾向を知ろう
実地指導での指摘事項が多いのは、訪問介護事業→居宅介護事業→通所介護事業所の順です。
<指摘事項例>請求関連・計画書関連の指摘事項については、Q2.のAに記載しています。
■衛生関連
・訪問介護:汚物を扱う際の衛生管理が不十分である。下痢便などの汚物を扱う際は、ガウン・手袋を着用すること。またそれについて持ち帰る際は袋の口を閉じること。
・訪問看護:使用物品についての衛生管理不足。消毒で使用する酒精綿は、作り置きせず毎日使う分のみ作ること。
■掲示物
・短期入所:苦情処理体制に、外部の連絡先が記されていない。自治体や国保連の連絡先を掲載すること。
■運営規定
・福祉用具:運営規定に定められていない地域において、サービス提供を行っていた。重要事項に変更があった場合は、すみやかに届け出ること。
Q9.過去に人員基準に達していなかったことが判明しました。どうすれば?
自治体に報告し、適正に処理します。
- 複数の目で再度確認を
まずは常勤換算など、多数の目で、再度確認しましょう。一人の目では慌てて間違うことが多いものです。
- 自治体の担当課へ、迅速に報告
複数の目で確認しても基準に達していなかった場合は、迅速に担当課へ連絡しましょう。実地指導での指摘で発覚するより、事前準備をしていた中で発覚したという方が心証は良いものです。
- 過誤調整
国民健康保険連合会へ事情を説明し、過誤調整の事務手続きについてレクチャーを受けましょう。国保連のホームページでも詳しくフローなどが掲載されていますので、参考にしてください。
<過誤調整の流れ>
(1)事業所は、「介護給付費請求明細書の返戻依頼(取り下げ)について」を作成し、保険者へ過誤申し立てを行う。
(2)保険者は、過誤申し立て情報を作成し、国保連合会へ提出。
(3)国保連合会は、(2)の情報に基づき、過誤(取り下げ)処理、支払額の調整を行う。
(4)国保連合会は、処理結果を「過誤決定通知書」にて、保険者と事業所へ通知
過誤調整の注意点
・過誤(取り下げ)依頼は、保険者によって月の受付締切り日が異なるので、書類を提出する前に確認しましょう。
・支払額の調整とは、過誤(取り下げ)分の金額を当月の請求分から差し引くことです。請求分より過誤分の金額の方が大きい場合は、支払いが発生します。
<例:6月に過誤処理を行った場合>
・7月/通知・支払額の調整
・8月/再請求
・9月/再請求分の支払い
平行して、サービスを受けた利用者への返金も発生します。(居宅介護以外)実地指導前にこれらの業務を平行して行うことは、非常に大変なことです。こうならない為にも、スタッフの出入りなどは入念にチェックし、1人の目に頼らないダブルチェック体制をとることをお薦めします。尚、項目によっては「当該月の翌月末までに同様の状態の場合」「同様の状態が2か月続いた場合」といった細かい規定もあるので、しっかりと確認しましょう。
Q10.タイムカードや雇用契約書などを、別の場所にある本社で管理しています。実地指導の時はどのようにすればいいでしょうか?
取り寄せて、担当者にも同席してもらいましょう。
タイムカードや雇用契約書は、原本の開示を求められます。現物を実地指導の行われる事業所に持参してもらいましょう。また、前述の通り、事業所の管理者やサービス提供責任者が、勤怠や給与の業務に関わっていない場合は、本社からの担当者に同席してもらった方がよいでしょう。
尚、保管状況を確認されることもあります。その場合、通常は「別場所の本社で保管している」と説明すれば問題ありません。
Q11.実地指導で、不備がみつかったらどうなる?
指導に沿って、改善していきます。
- 講評で
実地指導の最後には講評があります。全体的にサービスの提供はどうだったか、ケアマネジメントの一連の流れはどうだったか等について口頭での報告です。聞き取りの際に引っかかった点や見学の際に指摘された事項などがまとめられ、指摘事項として事業所側に伝えられるのです。これには不備だけでなく、好事例(ご利用者のケアに際し、非常に工夫した点があった/スタッフ向けの研修で他にはみられない工夫があった等)の報告も含まれます。
- 正式文書で
その後、概ね1週間から3か月(自治体によってバラつき有)の間に、正式な文書として講評で伝えられた指摘事項が送られてきます(稀に、講評では出なかった内容が記入されていることもあります)。文書には「○○日までに改善報告を」と指示があり、報告書が添付されているか、もしくはホームページからダウンロードする形となります。文書だけの回答で済む場合や、写真・添付書類が必要な場合がありますので、当日の講評で、細かく確認しておくと良いでしょう。
提出した報告書で不足がある場合は、電話での聞き取りなどがあり、必要であれば再提出を求められることもあります。真摯な姿勢で指摘事項の改善を図りましょう。指摘事項の改善が図れたとの結果になれば、実地指導終了の旨が文書で届きます。
改善報告書の内容と提出方法
指摘された事項について、<どう改善したか><今後の取り組み方針や計画><過誤調整の事案の場合はその経過等>について記載し提出します。
<改善報告記載例>
■記載例(1)
・指摘事項:訪問介護事業所において、個人ファイルや連絡先などが、誰でも手に取れる状態で保管されていた。個人情報保護の観点から、鍵付きのキャビネなどで保管されたい。
・改善報告:ご指摘頂いた通り、事務所内に専用の鍵付きキャビネを設置し、鍵は管理者もしくはサービス提供責任者が保管することに決め、現在実施しております。(キャビネ写真添付)
■記載例(2)
・指摘事項:居宅介護支援事業所において、サービス担当者会議の実施を行ってはいたが、会議録についての整備が不十分だった。サービス担当者会議の実施にあたっては、必ず日時・場所・参加者・検討内容などが分かるように記載された会議録(サービス担当者会議の要点)を作成・保管すること。
・改善報告:不足していた「サービス担当者会議の要点」について、新たに作成致しました。(作成した書類を添付)今後につきましても、抜けのないよう、チェック体制を別紙の通り整えましたのでご報告いたします。
■記載例(3)
・指摘事項:福祉用具貸与事業において、保管や消毒を外部の業者に委託していたが、契約書の保管はあるものの、定期的にその状況の確認が行われていなかった。消毒や保管状況の確認は定期的に行い、またその記録も残すこと。
・改善報告:ご指摘頂いた外部事業者との委託契約に関して、今後は○か月ごとに消毒の状況と保管状況の確認を行い、別添記録用紙にて記録を残すように致しました。(記録用紙を添付)
Q12.事業所が指定取り消しになるのは、どんな場合ですか?
虚偽の報告や答弁があったとき
指定取り消しとなるのは、下記の事由がある場合です。
- 居宅介護サービス費の請求に関し不正があったとき
・人員基準を満たさず、サービス提供を行い、減算しないまま報酬を得ていた。
・必要な書類(個別サービス計画書やアセスメントシート、サービス提供記録など)を作成せず、サービス提供していた。
- 該当の事業所従業員が出頭に求めても応じず、質問に対して答弁せず、もしくは虚偽の答弁をし、検査を拒み、妨げもしくは忌避したとき
・再三の指導にも拘らず、虚偽の答弁を続ける等誠意がみられない場合
・虚偽の報告書の作成を続ける場合
指定取り消しの処分を受けた場合、該当事由の介護保険給付を受けた分の返還の他、加算金の支払いも課せられます。処分には、指定取り消しの他、「指定の全部若しくは一部の効力を停止」という処分もあります。
Q13.実地指導の結果で、ケアマネやヘルパーなど、従業員個人に処分が課せられることはありますか?
ありません。
実地指導の結果によって、従業員個人が処分されるということはありません。従業員の指揮監督を行うのは事業所を運営する法人であるため、不正が見つかった場合などは法人に対して処分が行われます。
※刑事事件の場合は別※
(例1)法人と従業員が手を組み、不正請求を行っていた場合
実際にサービス提供をしていないのにしているように記録を作成し、その分の給与も発生させ、法人は介護保険給付を不正に受け取っていた。
→このような場合は、詐欺罪にあたりますので、刑事事件へ発展します。
(例2)実地指導により、従業員による虐待行為が発覚し、実際に怪我を負わせた等の場合
→従業員個人の虐待行為による怪我等が明らかな場合は、介護保険課から警察へ通報されます。もちろん、事業所内の監督責任も問われます。
例えばケアマネの怠慢で、再三指摘していたにも拘らず作成すべき書類を作成していなかった為に法人が不利益を被った場合などは、法人側からの指導などがあり得ます。指導を重ねても改善が見られなかった場合は、会社側からなんらかの処分があるでしょう。
実地指導について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。